第25回 日本口腔顎顔面外傷学会総会・学術大会
大会長

新井 直也

(三重大学 口腔・顎顔面外科)

 第25回日本口腔顎顔面外傷学会を2024年7月5日(金)~6日(土)の2日間にわたり三重県のアスト津において開催する運びとなりました。伝統ある本学会を三重大学口腔外科学教室が主催させていただきますことを大変光栄に存じますとともに、会員ならびに関係各位の皆様に心より感謝申し上げます。

 学会のテーマは「よりよい治療のための次なる一歩」といたしました。“穴を深く掘るには広く掘らねばならない”という格言があります。ある領域で知識や技術を深めていくためには、それに合わせて基礎的な地盤を広げていくことが大切であるという意味の言葉です。口腔顎顔面外傷の治療は、より高度に、より先進的に深みを増してきました。さらに深く掘り進むためには、一度入口に戻って穴の幅を広げておく作業も必要となります。学会テーマの次なる一歩には、そのような“基本に立ち返る”という意味合いを込めました。そこで、教育研修会では「口腔顎顔面外傷誌への投稿のススメ」、学術セミナーでは「骨折治療器具の標準を学ぶ」との基礎的な内容を企画いたしました。特別講演は三重大学医学部でドクターヘリの導入に尽力され、またドラマの医療監修などにも関わられてきた今井寛先生にお願いしました。シンポジウムでは、顎関強直症をテーマに新旧の治療についてお話いただく予定です。

 三重県の伊勢市にある伊勢神宮には、式年遷宮と呼ばれる儀式があります。神宮のすべての社殿を造り替え神様に新殿に移っていただく儀式で、約1300年前から20年に一度の頻度で行なわれてきました。次回は2033年ですが、その準備が今年度から始まり地元はお祝いムードに包まれています。式年遷宮は、まだ使える社殿を壊して隣の敷地に全く同じものを造る一見勿体無い儀式にも思えますが、宮大工の技能の伝承のためにこの20年という間隔が大切だといわれています。宮大工は釘などの金属を極力使わない点で顎顔面骨折を扱う私たちとは発想が逆ですが、20年歳上の先輩から手取り足取り手術を教わるという技術の伝承という点では通じるもがあります。お時間が許せば、伊勢神宮まで足を伸ばしてお祝いムードを感じてみてはいかがでしょうか。

  参加される先生方にとって少しでも有意義な学会になることを期待しています。会場の休憩室では赤福を、会員懇親会では松阪牛、伊勢うどん、手こね寿司など三重県の味を楽しんでいただけるよう準備をしたいと考えています。多くの会員の皆様のご参加を心よりお待ちしております。